【書籍から学ぶ】新規事業の成功率を高める!“PMF”の視点と人材活用法
こんにちは。スキイキ広報担当です。
今回は「書籍から学ぶ人材活用」シリーズ、「PMF」(プロダクトマーケットフィット)というテーマを取り上げお届けいたします。
新規事業の立ち上げで成功する確率はわずか10%未満と言われ、多くの企業が大きな障壁にぶつかり失敗を経験しています。そういった状況の中では、自社の事業を見直し、本質的な課題を解決する必要があるでしょう。
本記事では、『新規事業を成功させる PMF(プロダクトマーケットフィット)の教科書』を取り上げながら、新規事業立ち上げに必要な「PMF」の考え方や専門的な視点を紹介しながら、成功率を高めるための人材活用について探ります。
『新規事業を成功させる PMF(プロダクトマーケットフィット)の教科書 』の概要
まずは、この本の概要をご紹介します。
本書の著者は、IT企業での営業やマーケティング支援事業の立ち上げ、自身のコンサルティング会社設立を経験してきた栗原康太氏。
多くの事業者が悩みがちな「プロダクト(商品やサービス)が売れない」というのは、必ずしも営業パーソンやマーケターの責任ではなく、プロダクトそのものへの課題もあり得ることを指摘しています。
現場担当者や事業責任者などの成果が出ずに苦労している方に向け、「PMF」と呼ばれる考え方の基礎理解から、実践における高度なフレームワーク、新規事業の落とし穴、成功率を高める工夫などが網羅的に解説されている印象です。
14の成功事例も含め、このPMFの理論を参考にすることで、事業を適切な方向に進めるヒントになると考えられます。戦略的な視点だけではなく見落としがちな前提への気付きとしても参考にし、チーム作りや人材活用の視点としても活かしていただければと思います。
PMFとは?新規事業を持続させる「マーケットフィット」の考え方
そもそも「PMF」という考え方は、世界有数の投資会社の創業者マーク・アンドリーセン氏によって、企業の成否を左右する要素として広められたもの。
つまり、プロダクトが顧客のニーズを満たせ、かつ潜在的な顧客のいる市場に存在できている状態のことをPMFと定義しています。
商品開発の分野において、顧客ニーズを調査・分析した上でその市場に向け開発を行い展開していく「マーケットイン」という考え方と、自社の方針や技術に応じて開発し、新たなニーズを発掘するように市場展開する「プロダクトアウト」という考え方がありますが、
このPMFの理論は前者に近い考え方と言えるでしょう。
PMFに至る要件を達成し、事業が成功・継続できるようになるかのカギは、このマーケットインの方向性で突き詰めることだとも言い換えられます。
「PMFした時は明らかにそれとわかり、PMFしているかどうか疑問に思っている時点ではPMFしていない」と著者が述べているように、それを見定めるシグナルをいくつかおさえておき、実際に事業を立ち上げる中で認識できるようにしておくと良いでしょう。
PMFしている場合、上記のようなことが起こり得るとのこと。このような状態になると、顧客が増え、売上も上昇、顧客満足度も高くなります。
それに伴い、事業が軌道に乗るのはもちろん、売れる商品に携わっているというモチベーションが生まれ、組織としても活性化した状態になっているでしょう。
次では、失敗ケースからPMFの考え方の大切さを見ていきましょう。
失敗ケースから学ぶ!プロダクトの作り込みのポイント
著者も述べていることですが、「成功はアート、失敗はサイエンス」と言われるように、事業の失敗には再現性があるため、失敗のパターンを事前に学び、自社の事業を振り返り・見直してみることが大切です。
ここでは、下記の3点に絞り、本書でも掲げられている失敗ケースの視点をご紹介します。
【ケース1】調査や分析より議論に終始しがち
1つめは、自分たちの思いつきや思い込みだけで議論をし過ぎてしまい、そのままプロダクトをローンチしてしまうようなケース。このケースの問題点は、市場動向や現実的な顧客ニーズを充分に検証しないまま社内で議論を重ね過ぎてしまうこと、またそれによって市場規模を確かめずに参入してしまうことです。
市場の変化が激しく、特に多種多様な顧客ニーズが生まれては消えていく時代、自分たちの単なる思い付きだけで、必ずしも顧客ニーズを的確に捉えることができるとは言えません。
コンセプトや仮説の段階、また試作品の段階では既に顧客ニーズの検証を進めているべきでしょう。
本書で紹介されている「アンゾフのマトリクス」も参考にするとわかりやすいのですが、新規・既存の軸で分けた際、新規領域では情報や仮説の精度が低くなる傾向にあるようです。議論のみに終始せず、市場や顧客に関する情報を正しく得て解像度を高めたアプローチをする必要があると言えます。
またその際、特に以下の項目も確認しながら、市場規模を考慮していくと良いでしょう。
ターゲットとなる顧客はどれくらいいるか?
十分な売上や利益を見込めるか?
十分な規模の他の市場やセグメントに広げられるか?
【ケース2】営業活動やマーケティングへの過度な投資
2つめは、PMFしていないのに、営業・集客上の課題や懸念を、その方法や体制、プロモーションといった手段の要因だと思い込み、過度な投資を先行してしまうケース。先に投資を行う結果、予算を無駄に消費してしまったり、中途半端に売れることでクレームに繋がってしまったりする可能性があります。
まずは、プロダクトの仕様やどのようなニーズに対応しているのかを明確にし、営業資料やWebサイトの作成を行うほか、そもそも受注を強化する前に顧客が満足できるようにプロダクトを作り込むことが重要です。
まだその点が曖昧なうちは、あくまでも最低限の販促にとどめた方が良いでしょう。
【ケース3】採用・人海戦術に依存した体制
3つめは、事業開発・運営に関わる人員やリソースを闇雲に増やしてしまうケース。新たな採用や、別部署からの異動要望を求めてしまう場合もあるかと思いますが、ただ合意形成するステークホルダーが増えてしまい、事業推進のスピードが低下するだけになるという恐れがあります。また、場合によってはむしろ人材が余ってしまい、仕事のために仕事を生み出さなければならなくなってしまう場合もあります。
プロジェクトの人数が多いほどマネジメントの難易度も上がるため、PMFに近い状態に達するまでに時間もかかってしまうでしょう。
プロジェクトにスキルを持った即戦力人材を求めるのは当然のことですが、アサインする人材要件やアサインのタイミングを間違えると非効率な状態になりかねません。
人員確保が必要な場合には、必ずしも正社員採用にこだわらず、適切な経験やノウハウを持った外部のプロ人材を期間限定でアサインするといったことも検討の余地はあるでしょう。
事業の成否に影響する!マーケットフィットへの解像度とは
ここからはPMFをはじめ、新規事業において成功率を高める秘訣をご紹介します。
【ヒント1】バリュープロポジションを固める
まずポイントとなるのが、「バリュープロポジション」と呼ばれる、自社が提供できるが競合他社は提供できない、かつ顧客が求めるであろう価値が明確になっているかという点です。バリュープロポジションが明確であれば、事業の方向性も、営業やマーケティングでの打ち出し方もわかりやすくなり、また顧客にも伝わりやすくなります。
顧客の求める価値と自社が提供できる価値を一致させる
競合他社が提供できない、独自の価値を提供すること
この2点が重要になってきます。顧客のニーズに応えながら、かつ他社と差別化できている状態を作ることができているかが大切です。
【ヒント2】プロダクトや市場に対する解像度を高める
次に重要になってくるのが、プロダクトや市場について、また顧客や競合他社、組織運営についても解像度を高めることです。解像度とは一般的に画面表示の細かさを表しますが、ビジネスでは「感度」、またその精緻さとも言い換えられるでしょう。
解像度が高いと、事業のプロダクトがどのようなものであるべきか、市場においてどのようなアプローチをすればいいのか、出せる企画やアイデア、改善の数も質も高まりやすくなります。解像度が高く経験豊富な人が、よく熟知した領域で事業を立ち上げるとうまくいきやすいというのは頷けるでしょう。
解像度を高めるためには、自社・他社商品に触れ、顧客インタビューや観察などを行っていくなど様々な方法が考えられます。
しかし、組織全体で継続的にこれらに取り組んでいくことは容易ではありません。そこでポイントになるのが “ドメインエキスパート”とも言われる存在です。
【★】解像度の高い人材(ドメインエキスパート)を活用するヒント
ドメインエキスパートとは、「特定の領域やトピックの情報に優れ、常人よりもその分野に対しての知識を多く有している人物」と著者は述べています。
そのような人材が組織にいることで、顧客ニーズの深堀りを行う際や、商品の検証を行う場合にも的確な動きをできるでしょう。
ただ、そのような人材を正社員として採用するには時間がかかってしまうケースや、予算が確保できなかったりする場合もあります。そこで、特に新規事業の立ち上げにおける人材活用に有効なのが、フリーランスや副業人材のような経験豊富なプロ人材をアサインすることです。
そのプロダクトの分野・業界に明るい人材、あるいは事業の立ち上げ・立て直しなどの経験豊富な人材から客観的な視点でアドバイスをもらうことで、自社の方針や思い込みだけで商品開発を突き進めてしまうのを防ぐことができます。
また、顧客ニーズの検証により分析と改善を行う際のサポートや壁打ち相手として、タイミングに合わせ柔軟に人材活用をすることも可能です。確度の高いニーズに応えるプロダクトを早期に展開できるでしょう。
このようなプロ人材を探す際に、スキイキのようなマッチングプラットフォームを活用すると、要件に合ったスキルを持った人材や、自社の弱い部分を補完する人材を早期にアサインできるかもしれません。
まずは週に数時間だけ、進んでからは実務も支援してもらうなど、事業フェーズに沿って人材活用をすることができ、急なマネジメントの負荷が増えるということもありません。
ぜひ、PMFをはじめ事業を成功へ導くための人材活用の選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。
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いかがでしたか。
PMFの考え方は、新規事業を立ち上げ、継続していくのに必要なエッセンスが多くあります。もちろん新規事業に限らず、既存事業を見直すことにも活用できるでしょう。
実際に専門領域について見直す際には、社外の第三者視点も重要になってきます。パートナー企業へヒアリングするほか、経験豊富な外部人材をチームにアサインし、解像度の高い視点を入れることも検討してみてはいかがでしょうか。
※参考書籍