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【書籍から学ぶ!】リーダーこそ正しく理解したい!高いパフォーマンスにつながる「心理的安全性」の本質

こんにちは!スキイキ広報担当です。

11月から新企画として、「書籍紹介」の記事をお届けします。
人材活用や組織作り、マネジメントなどをテーマとした書籍をピックアップしながら、実務のヒントとなる部分をご紹介していく予定です。ぜひ新たな視点を取り入れる機会としていただければと思います。

さて、今回のテーマは「心理的安全性」です。
心理的安全性とは、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のことを指します。
この記事では、ハーバード・ビジネススクール教授のエイミー・C・エドモンドソン著『恐れのない組織 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』を取り上げながら、心理的安全性を確保したチームビルディング方法についてご紹介します。

概要

この本では、心理的安全性の重要性について、実際の調査結果をもとに明らかにしつつ、具体的な企業を例として取り上げながら、心理的安全性の高い組織(フィアレスな組織)を作るためにリーダーがすべきことについて紹介しています。心理的安全性を高めることは、「学習力」と「実行力」を高めるアプローチとしており、組織の規模や分野を問わず適応できるとしています。

前提として押さえておきたいのは、近年、「VUCA時代」(Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguityの頭文字)と言われるように、先行きが不透明で将来の予測が困難な状態においては、高いパフォーマンスを出すためのチーム作り(チームビルディング)が欠かせないという点です。

従来の組織体制や業務体系と異なってきている今、様々な課題を解決するためには、個々のスキルを伸ばすだけではなく、チームでの連携がポイントとなっています。そのため、土台となる「心理的安全性」について理解した上でのチームビルディングが求められているのです。

こういった背景から、リーダーとして、チームやプロジェクトを牽引していく方は「心理的安全性」を正しく理解することが、具体的なマネジメントに活かしていく際に役に立つと考えられます。

ここからは、この本で着目したい3つのポイントを見ていきます。


Why?:心理的安全性はなぜ重要なのか?

この本の序盤では、様々な研究結果から心理的安全性がメンバー・チームのパフォーマンスにとって重要である理由が明らかにされています。

例えば、医療現場の様々なチームを対象にして、ミスに関するデータを集めるという研究を実施。当初、著者が考えた仮説では、「最も高い成果をあげるチームが最もミスが少ない」としてましたが、調査結果はむしろ逆で、「最も高い成果をあげるチームが最もミスの数が多い」ことが明らかになりました。

これは、報告するミスの数が多いことを指しており、ミスを率直に話せる風土があるからと結論づけられ、それが「心理的安全性」の発見、そしてパフォーマンスの向上につながることがわかったのです。

”個人および集団の能力を引き出したいと思うなら、リーダーは心理的に安全な企業風土従業員が不安を覚えることなくアイデアを提供し、情報を共有し、ミスを報告する風土をつくらなければならない”

15頁より

近年、多くの企業で行なわれている仕事は、機械的に同じ作業を繰り返すものではなく、新たなアイデアやほかのメンバーとの協働が欠かせないものが増えてきており、そのパフォーマンスを向上させるために心理的安全性が必要不可欠になっています。

心理的安全性の役割としては、「地理的分散を克服する」「対立を効果的に使える」「ダイバーシティから価値を引き出す」といった項目が調査結果から出ており、私たち『スキイキ』で紹介しているような外部人材を含んだチームビルディングを行う上でも、重要であると言えます。

地理的分散を克服する

81頁より

直接顔を突き合わせない状態で仕事を行なうとしても、心理的安全性があれば、ほかのメンバーにどう思われているかを心配せずに率直にコミュニケーションをとることができます。特にテレワークが進み、外部人材も含んでいる場合には、気になることがあっても聞きづらい場合もありますが、心理的安全性があれば、遠慮することなくコミュニケーションを図れるのです。

対立を効果的に使える

82頁より

意見が衝突した場合に、それを活用して実りのある意思決定ができます。どんなチームでも意見の対立はありますが、心理的安全性がなければ感情的になって自分の意見に固執し、チャンスをつかめなくなることがあります。逆に、心理的安全性があることで率直に意見を深掘りすることができて、パフォーマンスの向上につながるのです。

ダイバーシティから価値を引き出す

84頁より

様々な人材が集まったチームだからこそ、メンバーそれぞれの経験やノウハウを活かすことができます。心理的安全性があれば、メンバーの価値観を共有し、お互いに理解して、新しいアイデアへとつなげることも可能です。

このように、心理的安全性をもたせることによって、多様な人材で構成されたチームは特にパフォーマンスを向上することができると考えられるのです。


What?:フィアレスな職場の具体例は?―ピクサーのケース

本書では、心理的安全性が確立された恐れのない組織(フィアレスな組織)は下記のように定義されています。

”組織のリーダーは、ナレッジ(知識)が価値の重要な源泉であるなら、心理的安全性を生み出すことが重大な使命であることに気づいている。その意味で、フィアレスな組織とは、一度目標達成したら、それで終わりではなく、目標に向かって絶えず努力し続けるものだと言える。”

145頁より

成功している一握りの企業の事例の一つとして、ピクサーでの取り組みのやり方や築いた文化、心理的安全性がどのように作用しているかが紹介されています。ピクサーといえば、『トイ・ストーリー』をはじめとするヒット作を多数出し続けており、ほかにはない偉業を成していると捉えられるでしょう。

その秘訣が、創造性と批判の両方が生まれる状況をリーダーが作り出していることです。ポイントとして取り上げられている点は大きく2つあります。

【取り組み①】率直さを実現する「ブレイントラスト」

数名が数か月ごとに集まり、制作中の映画のシーンを一緒に観てランチをし、面白いと思うところとそうでないところを監督にフィードバックするというミーティングを実施。
そこで出た事実を告げる声に喜んで耳を傾ける姿勢を意識することで、新たなものへと進化し、面白い作品へとつながるといいます。

【取り組み②】遠慮なく失敗する

制作の早い段階で積極的に失敗できるかどうかが、成功のカギを握っていると理解しており、失敗するからこそイノベーションが起きるという考え方を持っていると言います。そのため、監督が構想に数年かけることを認めて給与も支払いますが、制作費の超過は制限するといった形で、ミスをしても社員が恐怖を感じないくらい心理的安全性の高い組織を作っています。

ピクサーのほかにも「率直さ」をもつ職場においては、心理的安全性によって、創造性、学習、イノベーションの部分で、計り知れない恩恵をもたらすことが、この本で明らかになっています。


How?:心理的安全性はどのように作るのか?

「恐れのない組織を作るには?」つまり、心理的安全性を生み出していくための3つの方法が解説されています。

土台をつくる

205頁

仕事のフレーミング、つまり自身のチームが取り組む課題の性質を捉えるということです。例えば、新たな言葉を使い、出来事や行動の意味をきちんと捉えることなど有効です。「ミスを調査する」というような言い方ではなく、「事故や失敗を研究する」と言い換えるのです。そうすることで、メンバーにとって自分の取り組む仕事がミスが起きやすい複雑な性質をしているという前提となり、自分の能力不足でミスが起こったという思い込みをなくしていくのです。

参加を求める

207頁

組織のメンバーの目線に立ち、メンバーが参加する必要性を伝えるということです。組織のあらゆる人の懸念や経験を共有する必要があるという考え方を浸透させること、そういった発言をすることが自然とできるような状態を整えていくことが次のステップとして重要になります。

生産的に対応する

209頁

発言したメンバーに対し、建設的な対応をするということです。発言したことによって、怒られたり、非難されたりすれば、心理的安全性はなくなってしまい。次に発言することがなくなるでしょう。リーダーは、発言した行動に対し、感謝し、敬意を払い、前進する道を示していかなければならないと言えます。

従来、日本の企業には縦割り方の組織が多く見られ、役職や立場、権限を行使し、メンバーを従えてきたリーダーも少なくないでしょう。
しかし、今の時代のリーダーには、メンバーを信頼し、個々の能力を最大限引き出すことが求められます。そのためには、いかに心理的安全性が高い環境を作れるかどうかがポイントとなるので、これらの方法や考え方をまずはリーダー自身がきちんと理解し、メンバーに働きかけてみるのが重要になるでしょう。


まとめ

「心理的安全性」というワードが話題になりつつも、自分のチームに当てはめて考え、具体的にマネジメントに取り入れているリーダーはそう多くないと思います。私たち『スキイキ』チームの中でも、この本に出てくるようなケースと似たような出来事を経験したこともあります。

日本では、沈黙する文化があり、従来、“空気を読む”ことが求められてきた組織もあるでしょう。
しかし、変化が激しく、先行きが見えない社会においては、そういった文化を変えて、アイデアが生まれやすい環境をつくる必要があると再認識させられます。企業の大小関係なく「心理的安全性」が重要であり、チームを導くリーダー自身の行動がカギとなるのです。

心理的安全性の高め方やマネジメントの方法については、過去記事でも紹介しています。

今回紹介した本と合わせて読んでいただき、高いパフォーマンスを出して機能するチームを作るための参考となれば幸いです。